Nikon Z6III 動画レビュー|RAW動画の実力と動画性能をFX3ユーザー目線で検証
- Yamaki Takurou
- 10月17日
- 読了時間: 5分
更新日:2 日前

これまで動画撮影では主にSONY機を使ってきましたが、今回は以前から気になっていたNikon Z6IIIを使用してみました。写真も動画も一台でしっかり両立できる、バランスの取れたハイブリッドモデルです。この記事では、長くSONY機を使ってきた私がZ6IIIを通して感じた魅力を、作例や使用感を交えながら紹介します。まずは撮影した映像をご覧ください。
夏の古民家を舞台に、日常のひとコマを切り取る映像を撮影しました。 Z6IIIのRAW動画は、実際に使ってみると扱いやすさと柔軟性の高さが印象的でした。ここからは、機材セッティングや描写について詳しく紹介していきます。
撮影機材とセッティング

今回の検証では、以下の機材を使用しました。
Nikon Z6III
NIKKOR Z 35mm f/1.2 S
NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
使用メディア

収録には CFexpress Type Bメモリーカードを使用しました。
Nikon Z6IIIでは「N-RAW」と「ProRes RAW」の2種類の形式を選択できます。今回はProRes RAWで収録しましたが、画質の差はほとんどなく、ワークフローや編集環境に合わせて選べます。
ProRes RAWはデータ量が大きいため、このカード1枚で約17分の収録が可能。長時間撮影を予定している場合は、複数枚を準備しておくと安心です。
Zレンズの魅力 ― Nikonを選ぶ最大の理由

Nikonを使う最大の理由は、やはりレンズの素晴らしさです。動画でもRAW撮影が当たり前になり、最終的な仕上がりを大きく左右するのはレンズだと感じています。その点で、Nikonのレンズは他社にはない独自の魅力を持っていると感じます。
NIKKOR Z 50mm f/1.2 S

Zレンズの中でも“名玉”として評価が高い一本。ピント面の立体感が際立ち、奥行きのある描写が得られました。空気感まで伝わるような仕上がりです。

小道具に使用したフィルムカメラは「Nikon 35Ti」。ファインダーを覗く女性を逆光で撮影しましたが、ハイライトも良好で、柔らかな描写を見せてくれます。Nikon好きなら、35Tiにすぐ気づいたかもしれません。

フォーカスブリージングも少なく、動画撮影にも安心して使える一本。被写体を自然に描き出してくれるレンズだと感じました。
NIKKOR Z 35mm f/1.2 S

RAW動画ではレンズ補正が効かないため光学性能がそのまま出ますが、日本家屋の障子や柱といった直線的な被写体が多い撮影でも歪みが気にならず、改めて光学性能の高さを感じました。描写傾向は50mmに近く、セットで持っておきたい一本です。
NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S

風鈴を撮影したカットでは、このレンズ特有のぐるぐるボケが表れました。シャープさに加えて、オールドレンズを思わせるボケ味が独特な世界観を描き出してくれます。個人的には、現代的な写りとクラシカルな描写が混ざり合う写りがとても気に入っています。

このカットも手持ちで撮影しました。レンズ内手ブレ補正の効果もあって、ブレを気にせず安心して構図に集中できます。今回は中望遠レンズとして使用しましたが、マクロ域にとどまらない汎用性の高さを実感しました。
AF性能 ― SONY FX3との比較で感じた違い

Z6IIIの動画AFは多くのレビューで高評価を得ていますが、実際に使ってみると人物の瞳AFに関してはSONY FX3と比べてやや不安定に感じました。特に被写体が小さいとき、横顔・うつむき姿勢、フレーム内で被写体が動くときにピントを見失うことがあり、撮影中に不安を覚える場面がありました。

Z6IIIはフォーカスエリアや速度、追従感度など細かいカスタマイズができる点は魅力ですが、設定を追い込んでも理想的な追従性にはまだ届かない印象です。

FX3では特別な設定をしなくても安定して瞳を追従してくれる印象がありました。フォーカスをカメラに任せて構図に集中したい私にとっては、Z6IIIのAFは改善の余地があると感じます。
RAW収録とISO感度の特性
Z6IIIのRAW動画(N-Log時)は、ISO800とISO6400が基準感度になります。そのため、RAW動画では編集時のノイズ処理が必須となりますが、拡張設定でLo 2.0(ISO200相当)まで選べます。ハイライト側の情報はやや減少しますが、NDフィルターに頼らず撮影できる点も大きなメリットで、今回の撮影でも積極的に活用しました。
掲載画像は、ノイズ量の違いを比較するためにカメラで400%拡大表示した映像をAtomosで収録しました。拡大によって、ISO800はノイジーに見えますが、実写では十分綺麗な画質が得られます。使用感としては、Lo 1.0以降ではノイズ処理が不要なほどクリーンな映像となるので、編集時の負担を軽減できます。
操作感と機動力 ― 個人クリエイターに寄り添う進化

Z6IIIを使って感じたのは、機動力の高さです。従来のZ6IIではRAW動画の収録に外部レコーダーが必須でしたが、Z6IIIは本体のみでRAW収録が可能。HDMIケーブルや外部機材を持ち運ぶ必要がなく、カメラ・レンズ・記録メディアだけで完結するシンプルなシステムを構築できます。

個人や小規模チームでの撮影にとって、この“身軽さ”は大きな武器。セッティングの自由度が増し、撮影テンポも向上しました。バッテリーに関しても、シーンごとにショートクリップを撮影をするスタイルで運用しましたが1本で1時間以上撮影できた印象で、実用的だと感じました。
まとめ ― Z6IIIは“総合力”で選ぶ一台

Nikon Z6IIIで動画撮影して強く感じたのは、総合力の高さです。
Zレンズならではの描写力と表現の豊かさ
「N-RAW」と「ProRes RAW」から選べる柔軟な収録形式
外部レコーダー不要でシンプルに完結する機動力
一方で動画AFはSONY機にまだ及ばず、瞳AFや被写体追従で不安を覚えることもありましたが、写真も動画も一台で高いレベルで楽しみたい方にとって、Z6IIIはバランスの取れたフルサイズ機として心強い選択肢になるはずです。
今回の撮影では、以前SONY FX3でRAW動画を撮影したのと同じロケーションを使用しています。ぜひ以下の関連記事もあわせてご覧ください。
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