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【ProRes RAW 撮影レビュー】SONY FX3 + Atomos|RAW動画収録を試す

  • 執筆者の写真: Yamaki Takurou
    Yamaki Takurou
  • 2023年9月29日
  • 読了時間: 4分

更新日:5月11日


ProResRAWはApple開発の動画RAWコーデック。編集時の負荷が少なく、12bit 4:4:4の情報を低データレートで扱えることから、今注目を集めています。今回はテスト撮影も兼ねて、ProResRAWに触れてみました。まずは撮影した映像をご覧ください。


撮影設定:ProRes RAW HQ 4.2K60p

SONY FX3とProRes RAW収録


最近のカメラでは、HDMI経由でRAW信号を外部レコーダーに出力し、収録する方法が主流になっています。この分野で業界をリードするのは「Atomos」と「Blackmagic Design」の2社。


  • Atomosは「ProRes RAW」

  • Blackmagic Designは「Blackmagic RAW」


このように、使用する外部レコーダーによって収録形式が異なります。

現状では、Blackmagic DesignはSONY機のRAW収録には対応していません。そのため、SONYユーザーはAtomos(ProRes RAW)を選択して収録することになります。



ProRes RAWの収録メディア


今回使用した「Nextorage AtomX SSDmini」
Nextorage AtomX SSDmini

Atomosで使用するメディアはSSDです。例えば、4K60pで収録する場合、960GBの収録時間は以下の通り


  • ProRes RAW HQ: 約35分

  • ProRes RAW: 約50分


ProRes RAWには2種類の圧縮レベルがありますが、どちらも品質に大きな違いは感じられませんでした。今回はHQを選びましたが、手持ちのメディア容量に応じて圧縮レベルを選ぶのが良いでしょう。汎用のSSDメディアを使用できるため、大容量でも比較的コストを抑えられる点も魅力です。



ProRes RAWのワークフロー


結論から言うと「ProRes RAW」 は編集環境の整備が進んでおらず、「Final Cut Pro」以外の編集ソフトではポテンシャルを最大限引き出すことが難しい状況です。


「Final Cut」では、「ISO」「色温度」の変更が出来るのに対して、使用したAdobe「After Effects」は「RAWからLogへの変換」「露出」の2項目しか変更できません。(Premiere Proも同様)


Premiere Pro
変更可能なパラメーターが少ない

もちろん、After Effectsの「Lumetriカラー」を使用して色温度などは擬似的に変更できますがRAWのメタデータに基づいて処理するのとは結果が異なります。

DaVinci Resolveではネイティブでサポートしておらず、メジャーな動画編集ソフトで扱いにくいのは致命的です。

RED RAWソース設定画面
参考:RED RAW素材を読み込んだソース設定画面

RED RAWと比べると、現象時に使用可能なパラメータ数は一目瞭然。高品質な12bitのデータを扱えるメリットはもちろんですが、編集のインフラ整備が遅れており、編集環境によって性能を発揮し切れないというのが実情となっています。



12bitRAWの画質について


こちらは直射日光の差すシーン。被写体のハイライトからシャドウまで、しっかりとレンジ内に収まっており、FX3の15+ストップというダイナミックレンジの広さがよくわかります。グレーディング時の感覚は内部収録 (10bit) データとは明らかに異なり、編集の幅が広がります。

S-Gamut3.Cine/S-Log3への変換
S-Gamut3.Cine/S-Log3への変換
グレーディング済み、色の再現も美しい
グレーディング済み

RAW収録とノイズ除去


FX3の基準感度(ノイズやダイナミックレンジなどのパフォーマンスが最も良い感度)は、ISO800もしくはISO12800となります。


FE 135mm F1.8 GM(ISO800で撮影)
FE 135mm F1.8 GM(ISO800で撮影)

そのままでもクリーンな映像に見えますが、赤枠部分を拡大(200%)してみると、意外にもノイズが乗っているのが分かります。ノイズに強いFX3とは言え、内部処理が行われていないRAWなので編集時のノイズ処理は必須です。


日中のシーンにもノイズ処理をするのは不思議な感覚ですが、内部収録に比べて高度なノイズ処理が可能なので、ディテールを保った解像感の高い映像が得られます。


左:ノイズ除去なし 右:ノイズ除去あり
左:ノイズ除去なし 右:ノイズ除去あり

因みに、ノイズ除去ツールは様々ありますが「Neat Video」が一番オススメです。ソフトウェア標準ツールや「DE:Noise」「Magic Bullet Denoiser」など様々あるプラグインと比べてもUIの使いやすさやディテールを保った処理が一番優秀だと思います。



SONY FX3の高感度について


古民家での撮影という事もあって、照明機材は室内のライト(白熱電球)のみ。あまりの暗さでISO12800、F1.2で撮影したカットです。


ISO12800・FE 50mm F1.2 GM
ISO12800・FE 50mm F1.2 GM

一般的にISOを上げていけばノイズレベルが上がりますが、FX3はISO12800で一気にノイズレベルが落ちます。これは、低感度 (ISO800) ・高感度 (ISO12800)の2つのBase ISO(基準感度)を搭載しているからです。つまり、撮影環境に応じて選択することにより、S-Log3・RAW設定時はISO12800でもISO800と同じ15ストップかつノイズレベルの低い映像を得られます。


他のカメラであれば、カラーノイズで使えない画になるところですが、ISO12800が常用で使える事には驚きました。


左上の赤枠部分を拡大
左上の赤枠部分を拡大
左:ノイズ処理なし 右:「Neat Video」
左:元素材 右:「Neat Video」

ここまでの高感度が妥協無く使えると、ライティングのセットが難しいシーンやワンマン撮影では、表現の幅が一気に広がるのではないでしょうか。


ISO12800・FE 50mm F1.2 GM
ISO12800・FE 50mm F1.2 GM

その他のポイント


・レンズ補正について


RAWなのでレンズ収差補正が効きません。そのため、レンズ自体の性能も試されます。写真だと簡単な現像処理ですが、動画だと処理が面倒。デジタル補正前提のレンズも増えてきたので、高倍率ズームなどは事前の画質テストがおすすめです。


・収録解像度について


センサー幅全域で読み出しとなり、4K(3840 X 2160)の10%程度広い4.2K(4240 X 2385)で収録されます。内部収録素材と組み合わせて編集する場合は注意が必要です。



ProRes RAW:所感



FX3の高感度と広いラチチュード、センサーのポテンシャルを最大限引き出す唯一の収録方法だけに、ワークフローの不便さが足を引っ張る結果となりました。現状のままでは、12bitの情報量が必要なければ、積極的に選ぶメリットが少ないと感じます。今後のワークフロー改善に期待したいです。

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