低価格シネマレンズの実力は? SLR Magic MicroPrime Cine 75mm T1.5 レビュー
- Yamaki Takurou
- 2月24日
- 読了時間: 4分
更新日:5月11日

今回紹介するのは「SLR Magic」のシネマレンズです。SLR Magicは香港に拠点を置く家族経営のレンズメーカー。2014年に発売したアナモフィックアダプター「Anamorphot」は、手軽にシネマティックな映像表現を実現できる革新的な製品として話題になりました。
SLR Magicの「MicroPrime CINE」シリーズは、フルサイズ対応のシネマレンズながら新品で約6万円で手に入る手頃な価格。日本国内でのレビューも見当たらず、どんな描写をするのか気になります。
今回は、Eマウント・フルサイズ対応の全6本(18mm・21mm・25mm・35mm・50mm・75mm)の中から、海外レビューで評価の高い「75mm T1.5」をテストしてみました。
デザインと操作性
フォーカスや絞りのギア位置はシリーズ共通で統一されており、レンズ交換時にアクセサリーの再調整が不要。ギアは業界標準の0.8Mピッチを採用しているため、フォローフォーカスなどの機材ともスムーズに連携できます。

フィルター径は全モデル82mmで、市販のフィルターをそのまま装着可能。フォーカスリングの回転角は150°あり、繊細なピント調整ができます。絞りリングはクリックのない仕様で、滑らかに明るさを調整できるため、映像撮影でも違和感なく操作できます。

鏡筒は金属製で、安価なシネマレンズに多いプラスチック外装とは一線を画す作り。しっかりとした重量感があり、撮影機材としての信頼性も十分です。
撮影レビュー

ファーストカットはシネマスコープで切り取ってみました。このレンズのコンセプトは「ヴィンテージ・ルック」ということもあり、全体的に滲みや色収差が見られますが、それが独特の世界観を演出してくれます。

中望遠レンズらしい浅い被写界深度と落ち着いた発色が相まって、非常に柔らかい描写。コントラストを少し整えるだけでも、雰囲気のある映像に仕上がります。


せっかくの大口径レンズ。光量の少ない環境でも試してみました。晴天時とは違い、収差が目立ちにくく、しっとりとした柔らかい描写。撮影環境によって印象が大きく変わるのが面白いところです。


フォーカスリングは適度な重さがあり、操作しやすいですが、動画撮影ではフォーカスを動かした際のブリージング(画角変化)が大きいため、シーンによっては注意が必要です。
解像力

解像力を確かめるため、ピント位置を固定したまま、絞りを変えて撮影してみました。絞り開放T1.5では、輝度差のある部分に色収差が顕著に見られます。全体的に柔らかい雰囲気が特徴的ですが、被写体によっては色収差が目立つため、開放での使用には注意が必要です。T2.8以降は解像力とシャープネスが一気に向上し、描写が安定してきます。

T5.6となると、解像感がしっかり出てくるものの、現代レンズのようなスッキリした描写とは異なります。周辺画質は、絞っても甘さが残りますが、動画ではフレーム外になることが多く、割り切れば十分実用的。純正レンズとは違う個性を求める人には、魅力的な選択肢になりそうです。
フレアと逆光性能

逆光で開放にすると、虹色のフレアが発生しやすいです。シネマティックな雰囲気を演出でき、光の使い方次第で印象的な映像が撮れそうです。
ボケ味
絞り羽根は13枚と贅沢な仕様。玉ボケの輪郭には色収差が出やすく、口径食も見られます。

総評
ここ数年、低価格帯のシネマレンズが次々と登場し、オールドレンズの描写を再現したレンズがトレンドになっています。ただ、中には解像力の低さや色収差といった光学的な欠点を「ヴィンテージ」として売りにしているものもあり、往年の名レンズとは一線を画すものが多いのも事実です。その点、SLR Magicは「APO HyperPrime」「APO MicroPrime」など、コンセプトの異なるシリーズを展開し、用途や予算に応じた選択肢を用意しているのが好印象です。
今回のMicroPrime CINE 75mm T1.5は、6万円以下で手に入る低価格シネマレンズとして魅力的な選択肢ではありますが、フォーカスブリージングの大きさや光学性能の面では価格なりな部分も感じられました。本格的なシネマレンズと比べると弱点はありますが、コストを抑えて映像制作を始めたい人や、個性的な描写を求めるクリエイターには面白い一本だと思います。購入は公式サイトやAmazonでも可能です。価格重視でシネマレンズを揃えたい人には、検討する価値のあるレンズです。
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