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【実写レビュー】Canon FD 55mm F1.2 S.S.C.|オールドレンズで動画を撮る理由「現代レンズと描写を比較」

  • 執筆者の写真: Yamaki Takurou
    Yamaki Takurou
  • 2023年9月29日
  • 読了時間: 4分

更新日:8月10日


Canon FD55mm F1.2 S.S.C.
Canon FD55mm F1.2 S.S.C.

映像業界で根強い人気を誇るオールドレンズ「Canon FD」。その魅力の一つは、70年代に登場した伝説のシネレンズ「Canon K35」と光学設計が似ている点にあります。特に注目されるのが、K35と同じ光学性能を持つとされる「FD55mm F1.2 S.S.C. アスフェリカル」(1975年)。近年、海外の映像制作者やテスト動画によってその描写の近さが話題になり、現在は手に入りにくい存在となっています。その魅力や特徴についてはこちらの記事でも詳しく紹介しているので、興味のある方はぜひご覧ください。


今回は、そのアスフェリカルモデルと描写傾向が似ていると言われる、1973年発売の「Canon FD55mm F1.2 S.S.C.」を使用し、動画撮影を行いました。非球面レンズは採用されていませんが、果たしてその描写にはどんな魅力があるのか。まずは撮影した映像をご覧ください。


SONY FX3 + FD55mm F1.2 S.S.C.

Canon K35シリーズとは?


1970 年代にキヤノンがシネマレンズ市場に初めて参入した製品。1973年と1976年に米国映画アカデミー科学技術部門賞受賞。映画「エイリアン2」「バリー・リンドン」でも使用されている。 Zeiss Super Speed (S35 フォーマット) と競合するように設計されましたが、35mmフルサイズをカバーできるため、映画やCM業界を中心に今なお人気の高いヴィンテージレンズの一つです。(18mmのみS35フォーマット設計)



撮影レビュー




まず、F値を変えて解像力の変化を見ていきます(左からF1.2→F2.8→F5.6)

F2.8になると、解像力やコントラストが安定します。F5.6でも大きな変化は感じられず、F1.2からF2.8の間がこのレンズの特徴を楽しめるF値だと思います。


木
SONY FX3 + FD55mm F1.2 S.S.C.
夕日の風景
SONY FX3 + FD55mm F1.2 S.S.C.

こちらの作例はF1.2で撮影しています。開放F1.2だとソフトな描写ですが、F2.8までレンズを絞るとシャープネスとコントラストが大きく向上。映像の雰囲気が異なり、より現代的な印象になります。絞りを絞るだけで幻想的な印象から現代的な雰囲気まで多彩な表現が楽しめます。


ポートレート
SONY FX3 + FD55mm F1.2 S.S.C.

ポートレートの場合、デジタル撮影の雰囲気が抑えられ、肌の質感の生々しさを和らげてくれます。周辺解像度の甘さはありますが、全体的な解像感は十分。4K撮影に必要な描写性能を持ちながら、現代レンズほどシャープでは無い、程よい収差とのバランスが絶妙です。



描写の特徴:フレア


レンズフレア
SONY FX3 + FD55mm F1.2 S.S.C.

柔らかく、どこか懐かしさを感じさせる温かみのあるフレアが、このレンズの大きな魅力の一つです。特に逆光のシーンでは、光がレンズ内で優しくにじみ、映像に印象的な表情を与えてくれます。



描写の特徴:ボケ



SONY FX3 + FD55mm F1.2 S.S.C.
SONY FX3 + FD55mm F1.2 S.S.C.

現代レンズの整ったボケとは対照的に、背景の距離や構図によって、わずかに渦巻きボケが現れることがあります。これはオールドレンズ特有の描写で、映像に独特の立体感や空気感を加えてくれます。



SONY「FE 50mm F1.2 GM」との描写比較


解像力



同じく開放の描写ですが、違いは一目瞭然。FE50mm F1.2 GMは、開放でも隅々までキレのある描写。ピント面の鋭さと立体感は、まさに最新レンズ。FD55mm F1.2は、ソフトフォーカスのようにノスタルジックな写り。解像力では劣りますが、温かみのある描写が魅力です。フィルムからデジタルに変わり、求められる設計思想も異なると思いますが、光学技術50年の進化を感じます。


フレア耐性



太陽を画面に入れて撮影。FD55mmは、光源の入り方次第で大胆なフレアが現れます。FE50mmは逆光でもコントラストを保ち、フレアが出にくく抑制された描写です。


ボケの質



最短撮影距離での比較カットです。FD55mmは、遠景では全体的にソフトな描写でしたが、近接では輪郭がほどよく引き締まり、柔らかなボケとともに自然な立体感が得られます。一方、FE50mmは、開放からしっかりとシャープ。背景のボケも滑らかで整っており、現代レンズらしい整った描写が印象的です。



アスフェリカルの影に隠れた銘玉


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FD55mm F1.2 S.S.C. は、「アスフェリカル」と比べて価格は約10分の1と非常に手頃ながら、その描写には確かな魅力があります。現代レンズでは敬遠されがちな収差や柔らかさも、映像表現においては“味”や“個性”として活きてくるポイント。映像に温かみや懐かしさを加えたいとき、このレンズは強い味方になってくれるはずです。コストを抑えつつも、ヴィンテージルックを求めるクリエイターにとって、注目すべき一本と言えるでしょう。


「Canon FD55mm F1.2 S.S.C. アスフェリカル」も過去記事で紹介しています。今回の記事とあわせてぜひチェックしてみてください。


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