Nikon ZR 実写レビュー|ショートムービー撮影で見えたRAW画質・AF・操作性
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更新日:2 時間前
ニコンとREDの技術を融合した、小型・軽量な映像制作用カメラ「Nikon ZR」。RAW動画や32bit float録音など充実した機能を備えていますが、実際の撮影現場ではどこまで使えるのでしょうか。今回は、古民家を改装したアンティークショップを舞台に、個人制作のショートムービーを撮影しました。まずは完成した映像をご覧ください。
1. Nikon ZRとは|Z CINEMAの小型・軽量モデル

Nikon ZRは、ニコンとREDの技術を融合した映像制作向けシリーズ「Z CINEMA」の小型・軽量モデルです。12bit RAWの「R3D NE」をはじめ、32bit float音声収録、4.0型バリアングルモニターなど、映像制作に役立つ機能をコンパクトなボディーに凝縮しています。EVFやメカニカルシャッターを省き、動画撮影に軸足を置いた設計も大きな特徴です。
2. 3種類のRAW動画形式とワークフロー

Nikon ZRは、「R3D NE」「N-RAW」「Apple ProRes RAW HQ」という3種類のRAW動画形式に対応しています。なかでも、REDのカラーサイエンスやワークフローを利用できる「R3D NE」は、本機ならではの大きな特徴です。
撮影前に3種類を比較しましたが、画質自体に明確な優劣は感じられませんでした。R3D NEを選ぶだけで画質が劇的に向上するというよりは、色の作り込みや調整のしやすさ、使用する動画編集ソフトとの相性で選ぶのが現実的です。
今回は、これまでの編集環境や導入済みのプラグインをそのまま活用できるApple ProRes RAW HQを選択しました。使用したAdobe Premiere Proのベータ版では、ISOや色温度などのパラメーターも直感的に調整でき、以前より扱いやすくなっていると感じます
3. 3本のレンズで見る実写描写とRAWの階調

撮影場所となった店内は、狭い通路や商品の配置によってカメラポジションが限られる環境でした。さらに、明るい窓際と暗い店内奥との露出差も大きく、「自然光をいかに生かすか」が撮影のポイントとなりました。
今回は、ZRのコンパクトなボディーに3本のレンズを組み合わせました。
NIKKOR Z 35mm f/1.2 S
NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
TAMRON 90mm F/2.8 Di III MACRO VXD(Zマウント)
店内の空間を見せるカットには35mm、商品や人物を印象的に捉える場面には50mm、手紙などの細部を見せるカットには90mmマクロを使用しています。
NIKKOR Z 35mm f/1.2 S

今回、最も出番が多かったレンズです。窓際の自然光と暗い店内が同居するカットでも、明るい部分の階調を残しながら、暗部にある棚や家具のディテールまで引き出せました。
店内には色味の異なる複数のランプがあり、自然光と人工光が混在しています。RAW素材は色温度を撮影後に調整できるため、それぞれの光の雰囲気を生かしながら、映像全体のトーンをそろえやすく感じました。

厳密なダイナミックレンジ測定ではありませんが、ハイライトとシャドウのバランスも調整しやすく、撮影時に感じた店内の雰囲気を損なわずに仕上げられました。
NIKKOR Z 50mm f/1.2 S

商品や人物を印象的に見せたい場面で使用しました。ピントを合わせた被写体から背景のボケまでのつながりが自然で、光量の少ない店内でも立体感を表現しやすいレンズです。35mmと描写の傾向が近く、レンズを交換しても映像全体の統一感を保ちやすい点もメリットです。
TAMRON 90mm F/2.8 Di III MACRO VXD

今回初めて使用しましたが、ピント面の解像感と自然な前後のボケを両立しており、細部を印象的に見せたい場面に適していました。RAW収録では、細かな質感を残しながら明るさやコントラストを整えやすく、紙の立体感やインクの濃淡も丁寧に表現できます。AFの動作もスムーズで、純正レンズから付け替えても大きな違和感はありませんでした。クローズアップだけでなく、AFを使った動画撮影でも実用的な選択肢です
RAWと単焦点レンズの組み合わせで感じた表現力

今回の撮影で特に実感したメリットは、単に「画質が良くなる」こと以上に、撮影後の調整幅を大きく確保できるできる点でした。窓際の明かりを生かしつつ、影の部分を潰さずに残すことで、落ち着いた空気感を余すことなく表現できます。明暗差の激しい室内でも雰囲気を保ったままカットごとのトーンを揃えられる安心感は、映像制作において非常に大きな強みとなります。
4. 32bit float録音|ワンオペ撮影で得られる安心感

音声収録のテストとして、ステレオショットガンマイク「SENNHEISER MKE 440」も試しました。ワンオペ撮影では、構図や露出、ピントに意識を向けながら、音声レベルまで常に監視するのは大きな負担です。

32bit float録音では、収録後に音量を幅広く調整しやすく、録音レベルの設定ミスによる音割れや音量不足のリスクを抑えやすくなります。今回のようなワンオペ撮影では、音声収録に対する不安を減らせる心強い機能だと感じました。
5. AF性能|動画ではカメラ任せにしづらい場面も

AF性能については、以前Z6IIIをレビューした際に感じた傾向が、今回も残っている印象でした。人物が正面を向き、カメラとの距離が大きく変わらない場面では、安定して追従します。
一方、被写体が横を向いたり、カメラとの距離が変化したりすると、顔を見失ってピントが背景へ抜ける場面もありました。人物撮影では横顔になるカットも多いため、今回は必要に応じてMFへ切り替え、手動でフォーカスを追っています。

AFだけに任せられる安心感という点では、筆者がこれまで使用してきたSony FX3と比べると、まだ差を感じる部分でした。
6. 4.0型バリアングルモニターと軽量ボディー
4.0型バリアングルモニターは視認性が高く、構図やピントを確認しやすい点が魅力です。撮影内容によっては、外部モニターを使わずに運用できます。本体はバッテリーとメモリーカードを含めて約630gと軽く、機材全体をコンパクトにまとめやすい点も大きなメリットです。
タッチ操作への依存度は高め

一方で物理ボタンは少なく、設定変更ではタッチ操作や背面のマルチセレクターを使う場面が多くなります。今回の撮影では、マルチセレクターを意図した方向に入力しにくく、操作を誤ることが何度かありました。タッチ操作を使える状況では大きな問題になりませんが、手袋の着用時など画面を操作しにくい場面では、マルチセレクターだけで設定を変更する必要があり、もどかしさを感じます。
外部接続と長時間撮影で気になる点
外部機器を多用する撮影では、micro HDMI端子の取り扱いにも注意が必要です。長時間の業務撮影では、端子の固定方法に加え、使用環境や収録設定に応じた冷却面も考慮したいところです。なお、今回の撮影では、熱警告や熱停止が発生することなく撮影を終えられました。
7. まとめ

Nikon ZRは、コンパクトなボディーで本格的なRAW動画を収録できる、動画制作に特化したカメラです。今回の撮影では、RAW素材の調整幅や大型モニターの視認性、32bit float録音、機材をコンパクトにまとめられる軽さに大きな魅力を感じました。
一方で、人物を追うAFや物理操作、micro HDMI端子など、撮影スタイルによっては気になる部分もあります。長時間の業務撮影や外部機器を多用する場合は、事前に運用方法を検討しておいたほうがよいでしょう。それでも、小型・軽量な機材でRAW収録を行いたい人にとって、ZRのコストパフォーマンスは非常に高いと感じます。

今後は、フルサイズHDMI端子や充実した物理操作、より安心感のある冷却機構を備えた上位モデルにも期待したいところです。ZRは、現在の完成度だけでなく、これからのZ CINEMAシリーズの展開にも期待を抱かせてくれる1台でした。
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